久しぶりの更新です! Pick Up MaestroシリーズのVol.3はラテンベースの礎を作った一人。 Bobby Rodríguezです。 ラテンの黄金期に膨大な音源を残していますのでその一部を紹介していきます。
Bobby Rodríguez(ボビー・ロドリゲス)のプロフィール
Roberto”Boby”Rodriguez(ロベルト・"ボビー"・ロドリゲス) (フロリダ州タンパ、1927年5月2日~2002年7月29日) キューバ人とプエルトリコ人の両親を持つBoby Rodriguezは、コントラバスおよびエレクトリック・ベースの最も重要なラテンベースの巨匠の一人です。 ニューヨークで17歳の時、Julio Andinoに代わってMachito&His Afro-Cubans Bandへ参加することでキャリアをスタートさせます。 そして、Dizzy Gillespie、Cal Tjader、Eddie Palmieri、Willie Bobo,Mongo Santamaria,Joe Cuba、Eric Dolphy、Alegre All Stars、Tiro Rodriguesなどのレコーディングに参加するようになります。 またCharlie Palmieri、Tito Puenteの最盛期といえる期間に長期に渡って携わっています。 ベースを弾きながら足でClaveを刻むというスタイルも彼の特徴ですね。 どんなフレーズからもクラーベを感じられるのはこれ故なのでしょうか。 そして、常にジャジーなフレイジングを用いているのも大きな特徴かと思います。 エレキベースを演奏する際には、ほぼ全て親指でピッキングしているのもユニークですね。 "Dedo Gordo(=親指)“というニックネームがあるのはこれ故です。 Baby Bassの音に似せようとこの奏法を用いているのかと思いますがエレキベースでラテンのグルーヴを出すのにこの奏法は欠かせないものだと思います。 (こちらの記事でこの奏法については紹介しています。)
Bobby Rodríguezの参加する名盤とそのベースライン
Tito Puenteとの作品
Tito Puenteの作品の中でも最も盛んな活動をしていた時期にBobby Rodriguezは多く参加しています。 作品の中で、数多くのトゥンバオのバリエーションを披露してくれていますが時折大変にメロディックで、クリエイティブなアドリブソロも行っています。 Tito Puenteとの活動は、1950年代から1990年代まで続けられました。
“Dance Mania”
“On Broadway”
“Mambo Diablo”
“Cuban Carnival”
“Salsa Meets Jazz”
“Goza mi Timbal”
“Descarga Tito Puente& Michel Camilo
Montreal Jazz Festival”
”Ode to Cachao”でのベースソロ
1990年のアルバム"Goza Mi Timbal"の"Ode to Cachao"という曲はBobby Rodriguezのソロがたっぷりと演奏されています。 Israel López Cachaoへの敬意と共に、Bobby Rodriguezの素晴らしいラテンジャズへのアプローチを披露しています。 3つのパートでベースソロが弾かれているのと、ソロ的なモントゥーノのパータンを紹介します。
Bass Solo 1
1:06〜からの最初のベースソロのセクションです。 アルペジオを中心としたジャジーなソロですね〜
Bass Solo 2
2:41〜の2回めのBass Soloパートです。 2拍3連を用いたフレーズが多用されていきよりラテン感が増しています。
BreakでのPiano Montunoっぽいフレーズ
3:40〜のセクションは、Bass Solo 2の後のブレークでPiano Tumbaoのブレークのようなフレーズをベースで弾いています。 開放弦を上手く使ったフレージングで面白い響きになっていますね。 後のMamboのセクションもこのフレーズを引き続き弾いています。
Bass Solo 3
4:36〜は最後の3回目のベースソロです。 冒頭は、今までで一番高い音域を使った早いパッセージで盛り上げています。 全体にレイドバックした歌いまわしなのでよく音源を聞いて参考にしてみてください。
Tito Puenteの作品でのBass Tumbao
“Tim Mom Bo”
ご機嫌なCha-Cha-Chaのリフです。 全編こちらのリフを弾いています。
”3-D Mambo”
1:33〜のTumobaoです。 "3-D Mambo"は、キューバのリズムや楽器、モダンジャズのハーモニーを管楽器で表現した素晴らしい曲です。
譜例のトゥンバオの6音目(2小節目の1拍目の8分裏)には特に注目してみましょう。 この音はRumbaで演奏されるコンガのうちQuinto(キント)のリズムです。 一般的なトゥンバオにはないシンコペーションとルンバのテイストが加わった特徴的なトゥンバオです。
※Quinto(キント) ルンバの演奏で使用されるリードパートにあたる最も高音のコンガです。 こちらのwikiの記事を参照してみてください。 譜例の上部のフレーズがQuintoのフレーズです。 このフレーズはクラーベを半拍ずらした位置からスタートさせたフレーズになっています。
ハーモニー的には、2つ目のクラーベの5音目(3小節目4拍目8分裏)のBナチュラルの音はG7の3rdとなります。 このトライアドの転回型は、クラシック音楽ではよく見られるが、ジャズではこの時点ではまだ珍しく、後に様々なジャンルで非常に重要な意味を持つようになります。
“Cuando te vea”
"Cuando te Vea"は、当時において最も重要なラテンヴォーカリストの一人であるSantos Colonの素晴らしい歌声をフィーチャーしています。 譜例は3:19〜のものです。 この曲でのBobby Rodriguezのトゥンバオは、上記譜例のような4種類の2クラーベ毎に変化させているベース・トゥンバオをループさせた練習の題材にもしやすい曲です。 以前に記載したClave Neutralの分類を各々のフレーズに記載しておきました。 2段目を除いて Habanera(Anticipated Single-Ponche)→ Habanera(Anticipated Double-Ponche)→ Tresillo(Anticipated Single-Ponhe ただし8分でAnticipated)→ Habanera(Anticipated Single-Ponche) の繰り返すパターンになっています。 フレーズの分析にもこの方法は便利ですね〜
“Hong Kong Mambo”
Hong Kong Mamboは、Tito PuenteがMarimbaを演奏してます。 この曲でのトゥンバオのフレーズはTitoのMarimbaのテーマとユニゾンになっているので、ベースのトゥンバオもTitoの考案と思われます。 これはクラーベに沿ったフレーズになるので、Clave Neutralによる分類はできません!
“Llegó Miján“
“Llegó Miján”の1:58〜のTumbaoはGeneric Tumbaoの中でも最もレアなパターンである Bolero(Anticipated Double-Ponche)です。 Funkyな感じですよね〜 譜例の3小節目裏のAの音を省略するとこのパターンの純粋な形になります。
“Mi Chiquita Quiere Bembe”
”Mi chiquita quiere bembe”の2:30〜の部分の採譜です。 この曲は4/4と6/8の間でビートが切り替わっていきます。 テンポは2倍となり、1拍の分割数は4から3へと変化していきます。 この辺りは6/8拍子について書いた過去の記事を参照してみてください。
Machito and his Afro-Cubansとの作品
Machitoのバンドの出身者にはたくさんの偉大なミュージシャンがいます。 Tito Puente、José Mangual、Julio Andinoなどなど… そしてこの記事で紹介している最高のベーシストBobby Rodriguezもこのバンドの出身者です。
“Relax and Mambo”
“Kenya”
“Blen Blen Blen”
Machito and his OrchestraでのBass Tumbao
“Cubop City”
Guarachaのバリエーションのようなベーストゥンバオです。
“Vacilando”
“Mambo Mucho mambo”
1:37〜のトゥンバオです。 ファンキーでかっこいいですねー
“Mamboscope”
1:13〜のトゥンバオです。 前半のテーマ部はGuaracha、トランペットソロ部分はTresilloとGeneric Tumbaoを弾いた後にこのフレーズが出てきます。
The Alegre All Starsでの作品
1961年に始まったこのグループは、6枚のアルバムを発表しています。 このグループは、 フルート奏者のJohnny Pacheco 歌手のRudy Calzado ティンバレス奏者のFrancisco "Kako" Bastar 伝説のトロンボーン奏者Barry Rogers。 ベーシストのBobby Rodriguezらが参加していました。
“The Alegre All Stars Vol.1”
“El Manicero – The Alegre All Stars Vol. 2”
“Lost And Found – The Alegre All Stars Vol. 3”
“Way Out – The Alegre All Stars Vol. 4”
“They Just Don’t Makim Like Us Any More”
“Perdido”
The Alegre All StarsでのBass Tumbao
“Estoy buscando a Kako”
ここでとりあげた、 "Estoy buscando a Kako” という曲では、 「Estoy buscando a Johnny Estoy buscando a Bobby Estoy buscando a Charlie Estoy buscando a Kako」 というように、 「Estoy buscando a 〇〇=〇〇はどこ?」 というCoroでバンドの各メンバーを探す歌詞のコーラスの終わりにユニゾンでブレイクしてそのプレイヤーのソロが始まる… というシンプルですが面白いアレンジです。 各人のソロは4クラーベずつで構成され、同じフレーズで終わらせています。 譜例は、1:04〜の箇所です。 Coroで”Estoy buscando a Bobby”と歌うところから始まりBobby Rodriguezのソロの終わりまで採譜してあります。 美しいフレーズのソロは、曲のキャッチなフレーズである「donde esta=どこだ?」という歌のメロディのフレーズを引用したダブルストップで終わっています。 最初のピックアップのフレーズは、いわゆるバップフレーズと呼ばれるようなビバップのボキャブラリーのフレーズです。 ピックアップで弾いたそのバップフレーズの最後の部分をモチーフにして、ソロ全体を構築していっています。 そして、最後のフレーズでアレンジのテーマに戻るまで、全て冒頭のモチーフを発展させていったものとなっているのが譜面で見るとわかると思います。
その他の参加作品
ほかも色々と膨大なレコーディングがあるのですが、代表的なものだけピックアップしていきます。
“Acid” Ray Barretto
“Acid”
Boogalooが流行している最中だった1968年に発表されたこちらのアルバムののタイトル曲は、Bobby Rodriguezのベースラインを中心にしたベーシックなDescargaです。
“Son Con Cuero”
“Echando Pa’Lante” Eddie Palmieri
“El Sonido Nuevo” Cal Tjader & Eddie Palmieri
“Picadillo”
“Afro” Dizzie Gillespie
“A Night in Tunisia”
Dizziy Gillespieの作品にも参加しているものが多くあります。 "チュニジアの夜"をAfroで演奏しているこちらでのBobby Rodriguezの演奏も秀逸です。
“Live at the Red Garter Vol.1” Fania All Stars
“Live at the Red Garter Vol.2” Fania All Stars
“El Pirata Del Caribe” Joe Cuba
“Ritmos y Cantos Callejeros”
Cortijo y Kako y sus Tambores
ということで、久しぶりの更新はラテンベーシストのマエストロのBobby Rodriguezを紹介した記事でした。 名盤、名演が数え切れないほどあるのですがこれくらいで今回はこれくらいまでで。 またラテンベースの記事も更新を続けていきたいと思います。
ベースレッスン「マイナー・トライアドの転回形」
メジャー・トライアドの転回形と同様に解説していきます。 Cマイナー・トライアドの転回形は下記のようになります。
基本形
基本形は… 最低音がコードのRootでそれに短3度上、完全5度の上が重なります。
第1転回形
第1転回形は… 最低音がコードの短3度の音で、その上に完全5度の音、さらにその上にオクターブ上げたRootが重なります。
第2転回形
第2転回形は… 最低音がコードの完全5度の音、その上にRoot、さらにその上にオクターブ上げた短3度の音が重なります。
転回形で弾いてみよう
基本形
まずはCm△の基本形です。 これについてはこちらの記事でもさらに解説もしているのでご参考にして下さい。
第1転回形
Cm△の第1転回形です。 最初に6フレットのE♭音=短3度の音を中指で押さえてスタートさせるとよいでしょう。
第2転回形
Cm△の第2転回形です。 3フレットのG音=完全5度の音を人差し指で押さえてスタートするとよいです。
第1転回形を12keyで弾いてみよう
メジャートライアドのものと同様ですが、1オクターブずつ各Keyで第1転回形のマイナー・トライアドを弾いていきます。 運指などはTAB譜の譜例にとらわれずに弾いてください。
第2転回形を12keyで弾いてみよう
1オクターブずつ各Keyで第2転回形のマイナー・トライアドを弾いていきます。 運指などはTAB譜の譜例にとらわれずに弾いてください。
ということで、各Keyでのマイナー・トライアドの転回形を書いてみました。 メジャー・トライアドと同様にコードネームをみて即座に基本形、第1転回形、第2転回形と弾けるようにしていきましょう。
ベースレッスン 「メジャー・トライアドの転回形」
転回形とは、ルート音以外の音が最低音となるようにある構成音を1オクターブ上げる(または下げる)ことを言います。 トライアド(三和音)の場合… 3度の音が最低音となる第1転回形 5度の音が最低音となる第2転回形 が転回形となります。 Cメジャー・トライアドの転回形は下記のようになります。
基本形は… 最低音がRootで、それに長3度上、完全5度上の音が重なります。
第1転回形は… 最低音がコードの長3度の音、その上に完全5度の音、さらにその上にオクターブ上げたルートが重なります。
第2転回形は… 最低音がコードの完全5度の音、その上にRoot、さらにその上にオクターブ上げた長3度が重なります。
転回形で弾いてみよう
まずはC△の基本形です。 これについてはこちらの記事でさらに解説もしているのでご参考にして下さい。
第1転回形
C△の第1転回形です。 最初に7フレットのE音=長3度の音を人差し指で押させてスタートするとよいでしょう。
第2転回形
C△の第2転回形です。 3フレットのG音=完全5度の音を中指で押させてスタートするとよいです。
第1転回形を12keyで弾いてみよう
1オクターブずつ各Keyで第1転回形のトメジャー・ライアドを弾いていきます。 運指などはTAB譜の指定にとらわれずに弾いてください。
第2転回形
1オクターブずつ各Keyで第2転回形のトメジャー・ライアドを弾いていきます。 運指などはTAB譜の指定にとらわれずに弾いてください。
ということで、各keyでのメジャートライアドの転回形を書いてみました。 コードネームをみて基本形、第1転回形、第2転回形とすぐに弾けるようにしていきましょう!!
ベースレッスン「メジャースケール2Octaveを12keyで弾いてみる」
Igor’s Practice(James Jamerson’s Chromatic Approach Exercise )
エレクトリック・ベースの父とも称されるベーシストといえばJames Jamerson。 Motownレーベルでのレコーディングを中心に数々の名演を残しています。 今回紹介するのは、ジェイムス・ジェマーソンの伝記本「Standing in the Shadows of Motown」にも記載されているエクササイズです。 彼のベースラインの特徴といえばクロマチックアプローチ。
価格¥31,327
順位1,120,267位
著ドクターリックス
原名Dr.Licks
翻訳信, 坂本
発行リットーミュージック
発売日2004/04/23
日本語のやつは絶版なのかクソ高いです。
Standing in the Shadows of Motown: The Life and Music of Legendary Bassist James Jamerson
価格¥6,609
順位99,785位
著Licks, Slutsky, Allen, Jamerson, James, ほか
発行Hal Leonard Corp
発売日1989/06/01
原著のこちらを買ったほうがいいです。
これを習得する為のエクササイズとして、レッスンを受けていたロン・ブラウンというベーシストの為に考案してくれたものらしいです。
"Shadows of Motown"では途中までの記載になっていますが、 最初のフレーズを4度進行などで12keyに移調し、シャッフルのグルーブで弾いていきます。 全keyの譜例を載せてありますが、譜面を見ないで弾くようにしていきましょう。 オクターブの上下などは譜例の通りでなくても構いません。 移調する際に、なるべくローポジションを使ってください。 各Keyでの開放弦の使い方やローポジションを把握する練習になると思います。
ブラジル音楽のベース入門 その7「Baião(バイヨン)のベース」
ブラジル音楽のベースシリーズの久しぶりな更新です。 Sambaの次ならBossa NovaかPartido Altoでしょ? って、普通に考えたら思うのですが… 案外とこの辺りは、そこそこネット上にも日本語での情報が見られたので後回しにしてもいいかなってwww ということで、今回は情報があまりなかったけれども近年のJazzやラテンっぽいジャズでも頻繁に出てくるこのリズム。 Baião(バイヨン)について書いていこうかと思います。 あと、僕の個人的主観でBaião(バイヨン)は大好きな推しのリズムってのもありますwww
Baião(バイヨン)の基礎的な知識
Baião(バイヨン)、ブラジルの北東部のBahia(バイーア)州の音楽です。 1946年にBaião(バイヨン)の王様と称されるアコーディオン奏者のLuiz Gonzaga(ルイズ・ゴンザガ)が“Baião(バイヨン)”という曲をリリースしたことで現代的なポピュラーミュージックへと移行していきました。
トラディショナルな編成など
通常アコーディオン、トライアングル、Zabumba(ザブンバ)といった楽器が使われます。 メロディーとハーモニーをアコーディオンが演奏し、パルスとアクセントをトライアングルで演奏し、リズムのベースをZabumba(ザブンバ)が演奏するというのが一般的なスタイルです。 この中だとZabumba(ザブンバ)がちょっと馴染みがないですよね。 こんな楽器です。
平らな小径のバスドラムのような太鼓です。 このように肩にかけて演奏して、利き手でマレットを使い上部を叩きベース音を鳴らし、もう片方の手でスティックで下部を叩きアクセントを出すのが基本的な演奏のしかたとなっています。 そして、Baião(バイヨン)におけるベースラインはこのZabumba(ザブンバ)を模したものが基本的なものとなります。
Baião(バイヨン)の代表的な曲
“Asa Branca”Luiz Gonzaga
“Que Nem Jiló” Luiz Gonzaga e Humberto Teixeira
“Vem Morena”Luiz Gonzaga
Baião(バイヨン)のベースライン
基本的なBaião(バイヨン)のベースラインはZabumba(ザブンバ)のリズムを模したものになります。
Ex.1は最も基本的なベースラインとなります。 まずはこれをしっかり弾けるようにしましょう。
Ex.1のバリエーションとなるパターンです。 2小節パターンの後半部分にZabumba(ザブンバ)の定番的なバリエーションと同様の譜割りを交えたパターンです。 このパターンも頻繁に使われています。
これもよく使われるパターンです。 譜例では、「Root→5th→オクターブ上」 という音使いになっていますが、 「Root→5th→7th」という音使いもよく使われます。
Ex.3のバリエーションとなるパターンです。
ということで、基本的なBaião(バイヨン)のベースラインを紹介してみました。 別の記事で更にバリエーションを紹介していきたいと思います。
下記の記事もBaião(バイヨン)のベースラインについてのものです!
ラテンベース 入門「Guaracha(ワラチャ)のベースの発展」
Guaracha(ワラチャ)のベースの基本的な例を前回の記事で取り上げました。 今回の記事ではGuaracha(ワラチャ)のベースラインを発展させて行きたいと思います。 発展させていく過程でより理解が深まっていくと思います!
基本のベースラインの音数を増やす
こちらが基本のベースラインです。 まずはこれの音数を増やしていきます。
Ex.1の4拍目を8分音符2つに分割しています。
更に1拍目も8分音符に分割しています。
リズミックな発展
ここからはリズミックな発展のさせかたです。
Ex.1のベースラインの3拍目を8分音符に分割。 そして、4拍目をシンコペーションして弾いています。 これだけでもかなりトリッキーに聴こえると思います。
Ex.4の4拍目を8分音符に分割しています。
Ex.5の3拍目へのシンコペーションをせず、8分音符で全部弾いてみます。
Ex.5のベースラインの1拍目を8分音符に分割しています。
Ex.7のシンコペーションを活かして変化を付けたベースラインです。 これをまた少しずつ変化させていきます。
Ex.8のベースラインの変形です。 4拍目を8分音符にしました。
Ex.8の4拍目のシンコペーションを4分音符にしています。
Ex.10と同じリズム型ですが、選択しているコードトーンを少し変えています。
Ex.11の4拍目を変化させて8分音符でのシンコペーションのみにしました。
Ex.1のベースラインの4拍目をシンコペーションしたラインです。
ということで、Guaracha(ワラチャ)の様々なベースラインを紹介してきました。 この他にも色々なアプローチの仕方があると思いますので、 様々な音源などを聴いて参考にしていって下さい!
ラテンベース 入門「Guaracha(ワラチャ)のベース」
Guaracha(ワラチャ)はSon(ソン)に似た形で演奏されることが多いので、Son(ソン)をやや速くしたミドルテンポの楽曲と捉えられることが多いです。 19世紀にキューバの風俗を題材としたオペレッタ形式の舞台喜劇が行われていました。 その上演の前後に楽団がDanzon(ダンソン)やHabanera(ハバネラ)を演奏したのですが、その中でうまれたのがGuaracha(ワラチャ)と言われています。 そのため風刺的なものやピカレスク小説(16世紀-17世紀のスペインを中心に流行した小説の形式)などを題材にしたものや、ユーモラスな歌詞が多いです。
Guaracha(ワラチャ)の曲
“Cuidadito Compay Gato”
“Yo no soy Guapo”
“Compay Póngase Duro”
Guaracha(ワラチャ)のベース
Garacha(ワラチャ)でのベースラインについてです。 Son(ソン)やCha-Cha-Cha(チャチャチャ)と類似するものが多いです。
Ex.1
Son(ソン)でも同様のベースラインがありますが、これが基本的なベースラインとなります。
Ex.2
Cha-Cha-Cha(チャチャチャ)でも使用されるベースラインですが、これも典型的なベースラインの一つです。
Ex.3
Ex.2の4拍目を8分音符2つに変化させてものです。 これもCha-Cha-Cha(チャチャチャ)で使用される典型的なベースラインでもあります。
ということで、Guaracha(ワラチャ)について簡単に説明してきました。 ベースラインとしては、Son(ソン)との区別はそうなく単純にテンポが少し早く、前のめりなフィーリングというような解釈で充分かと思います。 色々な曲を聴いて研究してみてください!
ラテンベース 入門「Son Montuno(ソン・モントゥーノ)のベース」
Son Montuno(ソン・モントゥーノ)は、Son(ソン)のバリエーションの一つです。 1940年代頃にキューバで流行した、より激しくシンコペーションしたリズムの音楽です。
Son Montuno(ソン・モントゥーノ)での編成
Son Montuno(ソン・モントゥーノ)は、1940年代から1950年代にArsenio Rodriguez(アルセニオ・ロドリゲス)によって確立されました。 彼がモントゥーノの部分をさらに充実させるために、それまでSon(ソン)の楽器編成であるSepteto(セプテート/七重奏団)にはなかったピアノやコンガを加え、1本か2本だったトランペットを3本にするConjunto(コンフント)という編成ができました。 ピアノが導入されたことで、トレスやギターのいないバンドも増え、その後のラテン、及びサルサのオルケスタの典型的な楽器編成になっていくわけです。
Son Montuno(ソン・モントゥーノ)の曲
“Fuego en el 23”
“Bruca Manigua”
“El Reoj de Pastora”
“Dame Un Cachito”
CachaoがDescargaで取り上げていた曲
ラテンベースの最重要人物といえるマエストロ。 Israel Lopez “Cachao”がDescarga(デスカルガ)で取り上げていたSon Montuno(ソン・モントゥーノ)の曲です。
“Cogele el Golpe”
“Oye Mi Tres Montuno”
Son Montuno(ソン・モントゥーノ)のベース
Son Montuno(ソン・モントゥーノ)のベースラインは、現在サルサとして知られているものの基礎となるスタイルです。
Ex.1のようなものがSon Montuno(ソン・モントゥーノ)での基本的なベースラインとなります。 2小節パターンで1小節目の4拍目の2つめの8分音符でシンコペーションするものが多いです。 これはトレスのリズムと同様なものになっています。
実際の曲の中でのベースラインを見てみましょう。
"El Reloj de Pastora"のイントロ部分のベースラインです。 前半のトゥンバオ部分は、2小節パターンで1小節目の4拍目の8分裏でのシンコペーション、2小節目の4拍目はシンコペーションせずよくあるオクターブの音使いですね。
同じく"El Reloj de Pastra"テーマに入ってからのベースラインです。 2小節パターンで1小節目の4拍目の8分裏でのシンコペーション、2小節目の4拍目の2つめの8分音符でシンコペーションするようなパターンです。
Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ進行でのベースライン
Montuno(モントゥーノ)でしばし使われるⅠ-Ⅳ-Ⅴ進行でのベースラインを紹介していきます。 前半で紹介したものより、リズミックなものがありますがトレスのパターンを真似たようなものが多いです。 いずれもよく出てくるパターンなのでしっかり弾けるようにしましょう。
ということで、Son Montuno(ソン・モントゥーノ)のベースラインについて紹介してきました。 Son(ソン)のバリエーションとして、そしてSalsa(サルサ)の基礎となるものが多い音楽です。 ぜひ色々聴いて研究してみたください。
ラテンベース入門 「Son(ソン)のベース」
久しぶりのラテンベース入門の更新です。
色々とトピックはあるなと思いつつも、どこからとりあげるべきかと順番が難しく思っているのですがまずは思いつく順に各リズムについて更新していこうと思っています。
今回はSon(ソン)について書いていこうと思います。
Son(ソン)とは
Son(ソン)はキューバのオリエンテ州で生まれました。 スペイン音楽とキューバ音楽それぞれの文化の影響を組み合わせできた音楽です。 もっともキューバ的な音楽でサルサの原型となった音楽と言われています。 そして、Danzon(ダンソン)がCha-Cha-Cha(チャチャチャ)やMambo(マンボ)に発展していくのに影響も与えています。 ということで、様々なキューバ音楽において大きな存在となる音楽です。
ルンバって言われがち
Son(ソン)はキューバばかりでなく、世界的に知られる音楽となりました。 「El Manisero(南京豆売り)」という曲が、世界的に大ヒットしました。 これがアメリカへ持ち込まれた際に「Son(ソン)という言葉が英語のSongと混同されるから…」という理由でRhumba(ルンバ)と表記されることになってしまいました。 社交ダンスなどでもRhumba(ルンバ)という名前で組み入れられてしましました。 本来のキューバ音楽におけるRumbaと混乱してしまいがちですよね。 そこから大きく誤解と勘違いがうまれ、今もなお混乱が続いているわけです。 表記も現在ではどちらもRumbaとされているので単語を見ても見分けはできません。 ラテン音楽以外の人から 「ルンバで!」と言われた時は要注意です。
Son(ソン)に使われる楽器の変遷
もっとも初期のSon(ソン)では、ベースパートにはBotija(ボティーハ)という素焼きの壺、もしくはMarimbula(マリンブラ)という親指ピアノを使っていました。
最も初期の編成ではギター、トレス、Botija(ボティーハ)もしくはMarimbula(マリンブラ)というものでした。 そしてこれにBongo(ボンゴ)が加わり、Guiro(ギロ)が加わり。 ベースパートはウッドベースが使われるようになっていきました。 これがSextet(セステート/六重奏団)編成となっていきます。 グループによって多少の差はありますが、基本的にはギター、トレス、ベース、ボンゴ、ギロ、マラカス、クラベスといった編成です。 さらに1927年には、トランペットが加わりSepteto(セプテート/七重奏団)以降のSon(ソン)における基本的な編成として定着していきます。 楽曲の構成としてはメロディのいわゆる歌曲のテーマ部分(これをギアと称します。)があり、その後に後半にCoro-Canta(コロカンタ)を行うMontuno(モントゥーノ)セクションという構成になっています。
代表的なSon(ソン)の曲
有名な代表曲といえるようなものをいくつか紹介してみます。
“Echale Salsita”
“Son de la Loma”
“El Cuarto de Tula”
“Lagrimas Negras”(Bolero-Son)
他にもたくさんの名曲がありますがひとまずこんなところで。 以下はSpotifyにて、代表的と言えるSonのアルバムを紹介します。 これらも是非聴いてみてSon(ソン)の理解を深めて下さい。
Son(ソン)のベースライン
ようやくSon(ソン)のベースラインについてです。 Tumbao(トゥンバオ)のパターンは下記のようなものが多いです。
2分音符と4分音符でできたベースラインです。
Ex.1の3拍目をシンコペーションさせてリズミックにしたものです。
Ex.2を更に変化させ4拍目を次の小節にシンコペーションさせたものです。 サルサなどでもよくあるトゥンバオのパターンですね。
"Echale Salsita"イントロ部分のベースラインです。 Ex.1と同様のベースラインとなります。
"Son de la Loma"のテーマに入った冒頭部分のベースラインです。 Ex.2と同様のベースラインとなります。
モントゥーノでのよくあるベースライン
Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ7での典型的なベースラインになります。
Ex.6をリズミックにしたものです。
ということで、Son(ソン)について簡単に説明してきました。
他のキューバ音楽やサルサのルーツと言えるものですし、今もなおSon(ソン)の名曲たちは様々なところで歌われています。
是非とも色々研究してみて下さい。