こちらの記事 に引き続きDanzón(ダンソン)について書いていきたいと思います。
EstribilloまたはMontuno
前回の記事 で書いたDanzón(ダンソン)の曲構成
A.パセオ(Paseo)
B.Fluteによるテーマ演奏
A.パセオ(Paseo)をもう一度演奏
C.Violinによるテーマ演奏
Ending
と記載していましたが、Cのセクションの後にラストパートとなる、EstribilloまたはMontuno(モントゥーノ)のセクションと呼ばれるセクションが加わってきます。
このセクションは Danzón(ダンソン)の曲の中で最もAfroな要素が多い部分です。
このセクションに入るとややテンポが速くなり、よりアグレッシブなリズムで演奏されることが多いです。
Danzón(ダンソン)のMontunoでのベース
こちらはOrquesta Verar del Realの楽曲から。
1900~1920年頃の初期のTubaでのトゥンバオの典型的な例です。
1940年代にArcaño Y Sus Maravillasが台頭する以前に主要となる多くの作品を残すDanzón のグループである”Orquesta Antonio Romeu”の楽曲のDanzonのMontuno部分の譜例を紹介します。
これらの譜例は1925年から1928年に録音されたものですが、まだTresillo(USP)を主に使っていた大多数のSonのグループよりもずっと早くから、いわゆるコードを先行したシンコペーション=(Anticipated)したベースライン(この譜例だとGuarachaのASPのスタイル)を取り入れていました。
このあたりの分類は下記の記事をご参考に
「クラーベに左右されないTumbao〜Clave Neutral その1 USP Unanticipated-Single-Ponche」
「クラーベに左右されないTumbao〜Clave Neutral その2 UDP〜Unanticipated Double-Ponche」
「クラーベに左右されないTumbao〜Clave Neutral その3 ASP〜Anticipated Single-Ponche」
「クラーベに左右されないTumbao〜Clave Neutral その4 ADP〜Anticipated Double-Ponche」
曲全体での譜例
ここからはDanzón の曲全体でベース・パートを学んでいきましょう。
Orquesta Tata Pereiraが1924年に録音した"La Sandunguita"を元にしています。
(1998年にリリースされた同タイトルのIssac Delgadoの曲や、Alain Perezのヒット曲、Los Van Vanの1983年の名曲「La Sandunguera」とは別ものです。)
曲の構成は
「A-B-A-C-A-Montuno-Ending」
というような感じです。
この音源はチューバで演奏されているものです。
上声部の管楽器のパートはほとんどの場合、アレンジされた書き譜のものを演奏していますがベースパートであるチューバはほぼ間違いなく書き譜されていません。
耳とコードを頼りに即興で演奏していると思われます。
そんなわけもあってAセクションで毎回の演奏に少々の変化があります。
全体を暗譜して覚えてDanzón のグルーヴや雰囲気を掴んでみてください。
Danzon de Nuevo Ritmo(ダンソン・デ・ヌエボ・リトモ)
1940年代に入るとAntonio ArcañoとCachaoはこのセクションの伴奏をこれまでのBaqueteo(バケテオ)に変わって、コンガとカンパナを用いた新しいグルーヴを使い始めました。
これを「Nuevo Ritmo(ヌエボ・リトモ)」 と称していました。
そして、この新しいリズムスタイルを「 Danzón-Mambo」 と呼びました。
1950年代以降になるとモントゥーノセクションでは更に、 Cha-Cha-Chá(チャチャチャ)のリズムもよく使われるようになります。
ラテンジャズのライブでは、必ずと言っていいほどDanzón をオマージュした演奏が演目にありますがその際にはBaqueteo(バケテオ)の部分を短く省略して Cha-Cha-Chá(チャチャチャ)の部分を長く演奏することが多いです。
Danzónde Nuevo Ritmo(Cha-Cha-Cháの原型)
Danzónde Nuevo RitmoのMontuno(モントゥーノ)セクションで用いられる典型的なベースラインの一つです。
前述の通りCha-Cha-Chá(チャチャチャ)と同型のベースラインとなっています。
後にこのセクションのリズムだけを用いてCha-Cha-Cha(チャチャチャ)が誕生するわけです。
Mambo(マンボ)の誕生
1940年代にはDamaso Peréz Pradoが、Danzón(ダンソン), Son(ソン), そしてアメリカのビックバンドの影響を受けた新しい音楽”Mambo(マンボ)”が誕生しました。
Mambo(マンボ)は、1950年代にアメリカ特にニューヨークで成功を収めました。
Mambo(マンボ)は、アップテンポなホーンが主体となるダンスミュージックです。
Danzónde Nuevo Ritmo(Mamboのパターン)
ベーシストはSon(ソン)の基本的なベースラインを用いていましたが音価を短く弾かれています。
Cha-Cha-Chá(チャチャチャ)の誕生
1953年にヴァイオリニストのEnrique JorinがDanzón(ダンソン)を発展させ作り上げたのがCha-Cha-Chá(チャチャチャ)です。
Cha-Cha-Chá(チャチャチャ)はシンコペーションが少ないので、
ダンスもあまり複雑でなくて、踊りやすいダンススタイルとして人気となりました。
以前の記事 にたっぷり紹介しているのでそちらも参照してください。
Danzónde Nuevo Ritmo(Cha-Cha-Cháのパターン)
Cha-Cha-Chá(チャチャチャ)の基本的なベースラインはDanzón(ダンソン)のマンボセクションが元になっています。
ですので、そのマンボスタイルと同じように音価を短くして演奏しましょう。
ということで、Danzón(ダンソン)のマンボセクションについて書いてきました。
Danzón(ダンソン)から現代のキューバ音楽の元とMambo(マンボ)やCha-Cha-Chá(チャチャチャ)も派生していできていますので何かと勉強になると思います。