ラテンベース入門 【Pick Up Maestro】 Vol.3 Bobby Rodríguez

久しぶりの更新です!
Pick Up MaestroシリーズのVol.3はラテンベースの礎を作った一人。
Bobby Rodríguezです。
ラテンの黄金期に膨大な音源を残していますのでその一部を紹介していきます。

Bobby Rodríguez(ボビー・ロドリゲス)のプロフィール

Roberto”Boby”Rodriguez(ロベルト・"ボビー"・ロドリゲス)
(フロリダ州タンパ、1927年5月2日~2002年7月29日)
キューバ人とプエルトリコ人の両親を持つBoby Rodriguezは、コントラバスおよびエレクトリック・ベースの最も重要なラテンベースの巨匠の一人です。

ニューヨークで17歳の時、Julio Andinoに代わってMachito&His Afro-Cubans Bandへ参加することでキャリアをスタートさせます。
そして、Dizzy Gillespie、Cal Tjader、Eddie Palmieri、Willie Bobo,Mongo Santamaria,Joe Cuba、Eric Dolphy、Alegre All Stars、Tiro Rodriguesなどのレコーディングに参加するようになります。
またCharlie Palmieri、Tito Puenteの最盛期といえる期間に長期に渡って携わっています。

ベースを弾きながら足でClaveを刻むというスタイルも彼の特徴ですね。
どんなフレーズからもクラーベを感じられるのはこれ故なのでしょうか。
そして、常にジャジーなフレイジングを用いているのも大きな特徴かと思います。
エレキベースを演奏する際には、ほぼ全て親指でピッキングしているのもユニークですね。
"Dedo Gordo(=親指)“というニックネームがあるのはこれ故です。
Baby Bassの音に似せようとこの奏法を用いているのかと思いますがエレキベースでラテンのグルーヴを出すのにこの奏法は欠かせないものだと思います。
(こちらの記事でこの奏法については紹介しています。)

Bobby Rodríguezの参加する名盤とそのベースライン

Tito Puenteとの作品

Tito Puenteの作品の中でも最も盛んな活動をしていた時期にBobby Rodriguezは多く参加しています。
作品の中で、数多くのトゥンバオのバリエーションを披露してくれていますが時折大変にメロディックで、クリエイティブなアドリブソロも行っています。
Tito Puenteとの活動は、1950年代から1990年代まで続けられました。

“Dance Mania”

“On Broadway”

“Mambo Diablo”

“Cuban Carnival”

“Salsa Meets Jazz”

“Goza mi Timbal”

“Descarga Tito Puente& Michel Camilo
Montreal Jazz Festival”

”Ode to Cachao”でのベースソロ

1990年のアルバム"Goza Mi Timbal"の"Ode to Cachao"という曲はBobby Rodriguezのソロがたっぷりと演奏されています。
Israel López Cachaoへの敬意と共に、Bobby Rodriguezの素晴らしいラテンジャズへのアプローチを披露しています。

3つのパートでベースソロが弾かれているのと、ソロ的なモントゥーノのパータンを紹介します。

Bass Solo 1

1:06〜からの最初のベースソロのセクションです。
アルペジオを中心としたジャジーなソロですね〜

Bass Solo 2

2:41〜の2回めのBass Soloパートです。
2拍3連を用いたフレーズが多用されていきよりラテン感が増しています。

BreakでのPiano Montunoっぽいフレーズ

3:40〜のセクションは、Bass Solo 2の後のブレークでPiano Tumbaoのブレークのようなフレーズをベースで弾いています。
開放弦を上手く使ったフレージングで面白い響きになっていますね。
後のMamboのセクションもこのフレーズを引き続き弾いています。

Bass Solo 3

4:36〜は最後の3回目のベースソロです。
冒頭は、今までで一番高い音域を使った早いパッセージで盛り上げています。
全体にレイドバックした歌いまわしなのでよく音源を聞いて参考にしてみてください。

Tito Puenteの作品でのBass Tumbao

“Tim Mom Bo”

ご機嫌なCha-Cha-Chaのリフです。
全編こちらのリフを弾いています。

”3-D Mambo”

1:33〜のTumobaoです。

"3-D Mambo"は、キューバのリズムや楽器、モダンジャズのハーモニーを管楽器で表現した素晴らしい曲です。
譜例のトゥンバオの6音目(2小節目の1拍目の8分裏)には特に注目してみましょう。
この音はRumbaで演奏されるコンガのうちQuinto(キント)のリズムです。
一般的なトゥンバオにはないシンコペーションとルンバのテイストが加わった特徴的なトゥンバオです。
※Quinto(キント)
ルンバの演奏で使用されるリードパートにあたる最も高音のコンガです。
こちらのwikiの記事を参照してみてください。

譜例の上部のフレーズがQuintoのフレーズです。
このフレーズはクラーベを半拍ずらした位置からスタートさせたフレーズになっています。
ハーモニー的には、2つ目のクラーベの5音目(3小節目4拍目8分裏)のBナチュラルの音はG7の3rdとなります。
このトライアドの転回型は、クラシック音楽ではよく見られるが、ジャズではこの時点ではまだ珍しく、後に様々なジャンルで非常に重要な意味を持つようになります。

“Cuando te vea”

3:19〜
"Cuando te Vea"は、当時において最も重要なラテンヴォーカリストの一人であるSantos Colonの素晴らしい歌声をフィーチャーしています。

譜例は3:19〜のものです。
この曲でのBobby Rodriguezのトゥンバオは、上記譜例のような4種類の2クラーベ毎に変化させているベース・トゥンバオをループさせた練習の題材にもしやすい曲です。

以前に記載したClave Neutralの分類を各々のフレーズに記載しておきました。
2段目を除いて
Habanera(Anticipated Single-Ponche)→
Habanera(Anticipated Double-Ponche)→
Tresillo(Anticipated Single-Ponhe ただし8分でAnticipated)→
Habanera(Anticipated Single-Ponche)
の繰り返すパターンになっています。

フレーズの分析にもこの方法は便利ですね〜

“Hong Kong Mambo”

Hong Kong Mamboは、Tito PuenteがMarimbaを演奏してます。
この曲でのトゥンバオのフレーズはTitoのMarimbaのテーマとユニゾンになっているので、ベースのトゥンバオもTitoの考案と思われます。

これはクラーベに沿ったフレーズになるので、Clave Neutralによる分類はできません!

Llegó Miján

1:58〜
“Llegó Miján”の1:58〜のTumbaoはGeneric Tumbaoの中でも最もレアなパターンである
Bolero(Anticipated Double-Ponche)です。
Funkyな感じですよね〜

譜例の3小節目裏のAの音を省略するとこのパターンの純粋な形になります。

“Mi Chiquita Quiere Bembe”

2:30〜
”Mi chiquita quiere bembe”の2:30〜の部分の採譜です。
この曲は4/4と6/8の間でビートが切り替わっていきます。
テンポは2倍となり、1拍の分割数は4から3へと変化していきます。
この辺りは6/8拍子について書いた過去の記事を参照してみてください。

Machito and his Afro-Cubansとの作品

Machitoのバンドの出身者にはたくさんの偉大なミュージシャンがいます。
Tito Puente、José Mangual、Julio Andinoなどなど…
そしてこの記事で紹介している最高のベーシストBobby Rodriguezもこのバンドの出身者です。

“Relax and Mambo”

“Kenya”

“Blen Blen Blen”

Machito and his OrchestraでのBass Tumbao

“Cubop City”

Guarachaのバリエーションのようなベーストゥンバオです。

“Vacilando”

“Mambo Mucho mambo”

1:37〜
1:37〜のトゥンバオです。
ファンキーでかっこいいですねー

“Mamboscope”

1:13〜
1:13〜のトゥンバオです。
前半のテーマ部はGuaracha、トランペットソロ部分はTresilloとGeneric Tumbaoを弾いた後にこのフレーズが出てきます。

The Alegre All Starsでの作品

1961年に始まったこのグループは、6枚のアルバムを発表しています。
このグループは、
フルート奏者のJohnny Pacheco
歌手のRudy Calzado
ティンバレス奏者のFrancisco "Kako" Bastar
伝説のトロンボーン奏者Barry Rogers。
ベーシストのBobby Rodriguezらが参加していました。

“The Alegre All Stars Vol.1”

“El Manicero – The Alegre All Stars Vol. 2”

“Lost And Found – The Alegre All Stars Vol. 3”

“Way Out – The Alegre All Stars Vol. 4”

“They Just Don’t Makim Like Us Any More”

“Perdido”

The Alegre All StarsでのBass Tumbao

“Estoy buscando a Kako”

1:04〜
1:04〜
ここでとりあげた、
"Estoy buscando a Kako” という曲では、
「Estoy buscando a Johnny
Estoy buscando a Bobby
Estoy buscando a Charlie
Estoy buscando a Kako」
というように、
「Estoy buscando a 〇〇=〇〇はどこ?」
というCoroでバンドの各メンバーを探す歌詞のコーラスの終わりにユニゾンでブレイクしてそのプレイヤーのソロが始まる…
というシンプルですが面白いアレンジです。

各人のソロは4クラーベずつで構成され、同じフレーズで終わらせています。

譜例は、1:04〜の箇所です。
Coroで”Estoy buscando a Bobby”と歌うところから始まりBobby Rodriguezのソロの終わりまで採譜してあります。
美しいフレーズのソロは、曲のキャッチなフレーズである「donde esta=どこだ?」という歌のメロディのフレーズを引用したダブルストップで終わっています。

最初のピックアップのフレーズは、いわゆるバップフレーズと呼ばれるようなビバップのボキャブラリーのフレーズです。
ピックアップで弾いたそのバップフレーズの最後の部分をモチーフにして、ソロ全体を構築していっています。
そして、最後のフレーズでアレンジのテーマに戻るまで、全て冒頭のモチーフを発展させていったものとなっているのが譜面で見るとわかると思います。

その他の参加作品

ほかも色々と膨大なレコーディングがあるのですが、代表的なものだけピックアップしていきます。

“Acid” Ray Barretto

“Acid”

Boogalooが流行している最中だった1968年に発表されたこちらのアルバムののタイトル曲は、Bobby Rodriguezのベースラインを中心にしたベーシックなDescargaです。

“Son Con Cuero”

“Echando Pa’Lante” Eddie Palmieri

El Sonido Nuevo” Cal Tjader & Eddie Palmieri

“Picadillo”

“Afro” Dizzie Gillespie

“A Night in Tunisia”

Dizziy Gillespieの作品にも参加しているものが多くあります。
"チュニジアの夜"をAfroで演奏しているこちらでのBobby Rodriguezの演奏も秀逸です。

“Live at the Red Garter Vol.1” Fania All Stars

“Live at the Red Garter Vol.2” Fania All Stars

“El Pirata Del Caribe” Joe Cuba

“Ritmos y Cantos Callejeros”
Cortijo y Kako y sus Tambores

ということで、久しぶりの更新はラテンベーシストのマエストロのBobby Rodriguezを紹介した記事でした。
名盤、名演が数え切れないほどあるのですがこれくらいで今回はこれくらいまでで。
またラテンベースの記事も更新を続けていきたいと思います。

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